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02.12,2011
世界トップの国賓をもてなすスーパーシェフ
杉浦勝男氏
杉浦 勝男/スギウラ カツオ(The Beverly Hilton 総料理長)

杉浦シェフの名前を知ったのは、2年前。丁度ゴールデングローブ賞授賞式の舞台裏の様子がテレビで放映され、一部その晩餐会の料理も紹介された。1000人規模の晩餐会のメニューを任され、全てをカリフォルニア産の食材でもてなすという趣旨の基で、ひとりの日本人シェフが腕を振るっているという下りに釘付けになった。

杉浦シェフは、ビバリーヒルズの高級ホテル『The Beverly Hilton』の総料理長を勤め、アメリカの著名人たちに自らの料理を提供している。オバマ大統領の就任式やゴールデングローブ賞授賞式など、権威ある式典のメニューを任される、アメリカで最も有名な日本人シェフのひとりなのだ。

「強く想えば想いがかなう!」杉浦シェフとの出会いは、その素晴らしい一例。カリフォルニア政府観光局の「かなえるカリフォルニア」の企画で、夢を実現した日本人として杉浦シェフを推薦したことがきっかけで、Eat1のインタビュー、そして来日が実現した!3月に来日準備を薦める中で、そのスーパーシェフ、杉浦勝男シェフの横顔をご紹介しよう。


世界の国賓やハリウッドスターを納得させる料理

杉浦: 私のキャリアは日々の夢の積み重ねでできているのだと思います。これまで数多くの有名人、著名人に料理を出してきました。エリザベス女王、フィリップス殿下、プリンセスマーガレット、チャールズ皇太子など、英国王室の方々に料理をお出しする機会が何度かありました。最近ではオバマ大統領夫妻にも料理をお出ししました。オバマ大統領はもうすでに3度もビバリーヒルトンにお見えになっていますが、ホワイトハウスから信頼を頂いた証だと感謝しています。こうした迎賓の機会があり、認められることが大きなモチベーションにも繋がりますし、誇りにもなります。もちろん相当のホテルのレベルでないとそうした機会もないですから、職場としてのホテルランクも気にしながら、その最高レベルをキープすることも重要なことです。



東洋人である私がアメリカ人社会の中で、トップリーダーとして、アメリカ人や他国籍のスタッフを指揮していくのは、なかなか一筋縄ではいかないんですよ(笑)。アメリカは多国籍民族国家です。渡米した当初は、自分が日本人であるということに対しての違和感はなかったのですが、東洋人が大きなホテルの料理長をしていることは非常に珍しかったと思います。偏見も多少はあったでしょうね。どこで働いても、偏見や意識の壁を越えて認めてももらわなくてはならない。アメリカで認められるまでには、かなり時間が掛かりました。若い頃は、そうした逆境もバネになっていたと思います。あえて自分自身を追い込んで、奮い立たせていました。

最近の日本は、ちょっと元気がないですね。国として元気がないのは、アメリカの経済状況も同じですが、日本の場合は、「人」に生気がないように見受けられます。逆境の中で、奮い立たせる反骨精神を持った人が少ないのではないでしょうか?

日本の社会では、「人と人」「会社と会社」と、お互いの歩調を合わせ、グループとして力を発揮できることが、ジャパンパワーの源。しかし、全体的に元気がない状況の中で、周りと歩調を合わせていると、本当に個人のパワーも存在感も失われてしまう。アメリカは、民族も宗教も異なる人種が共存していますから、常に「自分」を表現し伝えていかなくては、認めてもらえない。元気がない時だからこそ、個人の力が光るとき。日本人の皆さんにももっと個性を発揮して、頑張ってもらいたいですね。


カリフォルニアの土地の魅力が夢に繋がる

広大なアメリカは、地域によって料理の特徴も大きく違います。料理人としては、その特徴を理解した上で、自分の個性を表現していかなくてはならない。例えば、ここビバリーヒルズでは、お客様の健康に対する意識が非常に高いのです。つまり健康維持のためにも新鮮で確かな食材を仕入れることが必然です。その点で、カリフォルニアの土地は素晴らしい。ビバリーヒルズから車で3時間走れば、カリフォルニア州中部の主要都市、フレズノ市に行けます。フレズノでは野菜はもちろん、オリーブオイル、チーズ、はちみつ、ターキーなど上質の食材を、生産者から直接仕入れることができます。仲介業者を通さずに農家と直接話ができる、素晴らしい環境です。仲良くなった農家の方々とビジネスを抜きにした交流を持つことも多々あります。


フレズノで、農業を営んでいる日系人はおよそ3000人。私が親しくしている方は、日系人の方に限りませんが、アメリカの食文化を、こんなに多く日本人が支え築いていると思うと、誇らしい気持ちになります。そして、情熱を持って作られた農産物に新たな命を吹き込んで、お客様にお出しするのが、私の仕事。お客様の意識も生産者の方々の意識も高いので、一瞬たりとも気が抜けません。私を誰かが「夢をかなえた人」「成功者」と評価して下さるのなら、そうした意識の高い環境があるということが何より起因しています。より意識の高い環境に自分の身をおき、その環境の中で夢を具現化していく。それができる可能性がこのカリフォルニアの土地に秘められているのだと思うのです。


世界が注目する 進化するカリフォルニア料理

私にとっては、カリフォルニアはアメリカ合衆国の一つ州ではなく、完全なる独立国だと思えるのです。カリフォルニアにはいろいろなものが凝縮されています。山や海など豊かな自然に恵まれ、アトラクションや買い物のスポットもたくさんあり、食材の調達も便利。一流のお客様も数多く足を運んでくれます。プロの料理人にとって、ビバリーヒルズほど良い条件が揃っている場所は他にはないでしょう。



料理の面から捉えても、カリフォルニアは、アメリカの他の土地と比べて、その魅力は突出しています。北から南に長い国土と恵まれた天候により、何と多種多様の農産物が多く収穫できることでしょう。そして、ワインやオリーブオイルの生産に恵まれていることも、料理文化が発達した要因になっていると思います。

多様な人種が交ざり合うことで、食文化が常に進化しています。「人種の坩堝=メルティングポット」という言葉がありますが、カリフォルニアの食文化は、未だメルティング=融合する経過段階。これから2世代、3世代と受け継がれ、初めて本当のカリフォルニア料理というものが確立されるのだと思います。私が料理人として、その進化の渦中にいることは、本当に幸せなことです。これほど常に触発され、料理が楽しい土地はないのですから。

南カリフォルニアは地中海気候なので、私が作る料理も、南仏から中近東の料理をベースに、カリフォルニアの食材を使って自分流にアレンジしたものです。オリーブオイルやハーブ類を使って、なるべくシンプルに調理します。料理を通して、カリフォルニアの食材の魅力を知っていただくことこそが私の使命です。


家族とテーブルを囲むことが最高の幸せ

今はすっかりビバリーヒルズに落ち着いています。カリフォルニアは、気候に恵まれ、食材の品質が良い。自分が好きな食材が手に入りやすいという環境は、代え難いものです。好きな料理を作りながら、ゲストに喜んでいただく。料理人冥利につきます。


プライベートは、大切な家族との時間です。我が家の庭ではハーブやレモングラスなどの香料を育てているので、もっぱら庭の手入れに時間を割き、あとは、やはり料理ですね。私は家に帰っても料理をします。なぜなら、私にとっての最高の時間は、家族と一緒に料理を作ることなのです。仕事を忘れて、家族みんなで料理を作って、美味しいものを囲んでテーブルを共にする。これ以上の幸せはありません。オンでもオフでも生活の中心には料理が必ずあるのです。

南カリフォルニアは地中海気候なので、私の料理は、南仏から中近東の料理をベースに、カリフォルニアの食材を使って自分流にアレンジしたものです。オリーブオイルやハーブ類を使って、食材 をシンプルに楽しむ料理が多いですね。

(杉浦シェフが愛用する、カリフォルニアのオリーブオイルはこちら)
http://eat1.jp/news/detail/30


『The Beverly Hilton』
www.beverlyhilton.com
ビバリーヒルズに位置し、ゴールデングローブ賞授賞式会場としても利用されているゴージャスなホテル。徒歩圏内にロデオドライブやバーニーズといったアメリカを代表する百貨店があり、ショッピングを存分に楽しめる。ホスピタリティー溢れたサービスは、家族旅行にもビジネスでの滞在にも最適。
住所:9876 Wilshire Blvd., Beverly Hills, CA 90210 U.S.A.
TEL:+1-310-274-7777  FAX:+1-310-285-1313


Profile:
杉浦 勝男 (Katuso Sugiura)

ビバリーヒルズの高級ホテル『The Beverly Hilton』の総料理長。横浜のホテルで修行を積み、1970年にヨーロッパへ。 北欧、ドイツ、イギリス、フランスなどを転々としながら料理の腕を磨き、1975年に渡米。ニューヨークのフレンチレストランを皮切りに、シカゴ、ナッシュヴィル、マイアミ、ハワイ、サンフランシスコなどアメリカ各地の一流ホテルで活躍し、16年前にビバリーヒルズへ移住。オバマ大統領の就任式やゴールデングローブ賞授賞式、アカデミー賞候補者発表ランチョンなど、権威ある式典のメニューを任されるアメリカで最も有名な日本人シェフのひとり。


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