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08.04,2010
東京で一番のラーメンを目指す
大切なのは、味とホスピタリティーマインド
Ivan Orkin/アイバン・オーキン(アイバンラーメン)

今やラーメンも日本を代表する料理のカテゴリーだ。NYタイムスでは、日本のラーメン事情が記事になり、日本で生まれたラーメンが海を越えて、世界の人たちに感動をあたえている。そしてラーメンを愛して止まぬアメリカ人料理人のアイバンさんの店「アイバンラーメン」が人気店としてマスコミを賑わしている。南烏山で営んでいる小さなラーメン店は、毎日長打の列でお客が絶えない。そんな噂を聞いて「どんなラーメンだろう?」「どんな人だろう?」と好奇心が膨らんでいった。多くのファンを虜にする「アイバンラーメン」の魅力とは?


Eat 1: そもそもフランス料理を極めたアイバンさんが、何故日本でラーメン屋だったんでしょう?

Ivan: 16歳のときにアルバイトをしたNYの寿司屋との出会いが、僕の日本好きのはじまりです。寿司もさることながら、日本人の礼儀正しさ、温かさにすっかり夢中になって、もっともっと日本人のこと、日本のことを知りたくなったんです。日本語を習って、言葉が少しわかるようになると、さらに文化や歴史に興味を持ち、迷わず大学では、日本文化を専攻。大学3年生のときに友人と見た伊丹十三監督の「たんぽぽ」という映画は、あまりに衝撃的でした。カップラーメンしか知らなかった僕は、家庭的な雰囲気の中で作られるラーメンがとっても魅力的で楽しく写ったんです。

Ivan: 日本人の人はね、皆「え?何でアメリカ人がラーメンなの?」ってびっくりするけど、日本にいる外国人は、結構ラーメンファンが多いんですよ。ツルツル食べるのも楽しいし、しょっぱくて味のインパクトがあって、homey(ホーミー)で。日本に憧れて、日本に住むようになって、いろんなラーメンを食べ歩いたけれど、実はその頃は、ラーメン店を自分でやるなんて思ってもいなかった。日本にいて、英語の先生をしたりもしたけれど、本当の意味で何をしたいかが24歳の僕には未だ解らなかった。それで、NYに戻って料理を本格的に一から勉強してみようと思ったんです。



Eat 1: 料理人になることにもともと興味があったんですね?

Ivan: その時は、それがベストだとも思っていなかったけれど、でも誰よりも食べることが大好きだったし、小さい子供の頃からレストランで食事をするのが大好きだったし、本当にいつも美味しい物のことばかり考えていたから、料理人が向いているかもしらないと考えたんだ。料理大学を卒業して、NYの有名レストランで働き、いろんなことを吸収したよ。とりわけ、ミシュランの4つ星レストラン「ルテス」での仕事は、料理人であることと、ホスピタリティーについて、多くを学んだ。「ルテス」の仕事もレストラン大手顧問会社のプライベートシェフという仕事もとても勉強になったけれど、でも僕はやっぱり日本で暮したかった。だから又、日本に来ることを決心したんだ。

Eat 1: そこで又日本のラーメンに再会する訳ですね。

Ivan: 本当にありとあらゆるラーメン店を食べ歩いていたので、僕はラーメンにはとってもうるさい。いろんなラーメンに出会ったことで、僕が考える僕の好きな味のラーメンを作ってみたくなった。日本にある多くのラーメン店は、子供が行くと、椅子が高すぎたり、女性一人では恥ずかしかったり、家族で行くと迷惑がられたり。何でみんなが楽しく通えるラーメン屋はないんだろう?って思いはじめた。いろんな疑問が集結して、だんだん僕がやりたいラーメンのコンセプトが固まってきて、「皆が楽しく通えるラーメン屋があったらいいな」という思いが強くなった。だから僕の店のコンセプトは至ってシンプル。カップルも女性一人でも、家族も子供も楽しんで通える店。そのコンセプトは、どんな店を作っても変わらないと思う。


Eat 1: 具体的に、皆が楽しめる店としてどんなことに配慮したんですか?

Ivan: まず、清潔であること。店内がクリーンなイメージで、軽快で心地いい音楽がかかっていて、誰に対しても「ありがとう」という気持ちを忘れないということ。凄くシンプルだけれど、サービス業の基本中の基本であるホスピタリティーは、殆どのラーメン店では感じられない。日本は、二人で営んでいるような町の小さな居酒屋さんなんかは、素晴らしいホスピタリティーがあるよね。今日しかない料理を「美味しいよ」と言って出してくれたり、「ありがとう」と「又来てね」という気持ちがとっても伝わってくる。僕はそんな店にしたかった。だからたとえ7歳の子供が来ても、無愛想なおじさんが来てもちゃんと目をみて「ありがとうございました」と言うように心がけている。ホスピタリティーって、料理の値段なんかで変わるものじゃないでしょう。700円のラーメンだって、家族がずっと楽しみにしていた、とっておきの一杯かもしれないし、子供にだってちゃんと誠意を持って「ありがとう」という気持ちを伝えれば「ごちそうさま」という言葉が帰ってくる。それが飲食店の魅力だと僕は思う。


Ivan: このホスピタリティーマインドは、僕がかつて働いていた「ルテス」から学んだもの。ビル・クリントンが来ていても、14歳の子供が来ていても、必ずシェフはテーブルに出ていって、きちんと挨拶をする。それは「ルテス」では、当たり前の文化で、僕もやっぱり、お客さんひとりひとりが僕のラーメンを気に入ってくれたかどうか、全部食べれなかった理由は何だったのかを知りたいもの。でも、それもコミュニケーションをとらなければ何も知らずに終わってしまう。ちょっと会話を交わせば、又来てくれるきっかけにもなるし、御客さんがどんな風に思っているのか感じ取ることもできるでしょう。でも、多くの東京のレストランは、このホスピタリティーを忘れてしまっている店が多い。日本人は、もともとおもてなしが上手な人種なのにね。



Eat 1: 最近は、NYでもラーメンブームという噂ですが、アイバンさんにとって、ラーメンの魅力って何ですか?最近のNYのラーメンについては、どう思いますか?

Ivan: 僕にとってのラーメンの魅力は自由であること。日本料理って、寿司にしても天ぷらにしても懐石にしても、作る側も食べる側もきちんとした流儀があるでしょう?ネガティブな意味ではないけれど、「固い」イメージがある。でも、ラーメンは、とても自由。作り方の流儀もない、基本も規則もない、いろんなタイプの麺があって、いろんな出汁がある。トラディッショナルなものもあれば凄く革新的にいろいろ考えて生み出されたラーメンもある。時代と共に進化しているものもあるし・・・。だから僕は僕の流儀で僕にとって一番美味しいラーメンを作っているだけ。
NYでラーメンブームなんて笑っちゃうよ。だって、未だ15軒くらいでしょう?僕ももう4年NYに戻っていないから、今のNYのラーメン事情は語れないけれど、15店舗くらいじゃ未だブームじゃない。最近ニューヨーカーがラーメンの美味しさんに気づきはじめたってところじゃない?寿司は違うよね。確かに世界的なブームになったと思う。だって、ニューヨーカーにとっては、「今日は、イタリアン?エスニック?それとも寿司?」というくらい一般的。「箸つかえない」とか「刺身もわさびもダメ」なんて人は、すっかり少なくなったと思う。

Eat 1: では、アイバンさんの目指す美味しいラーメンとは?

Ivan: どのメニューも僕は、僕が美味しい!と思うものしか出していないよ。日本人は、舌が肥えているから、いくらホスピタリティーとか言っていても、美味しくなかったらもう二度と来てくれないよね。もちろん、ラーメン程好みが分かれる料理もないかもしれないし、アイバンのラーメンなんて大嫌い!と言う人もいる。でも、僕が作るラーメンは、皆が美味しいものを作っている訳ではないの。解ってくれる人が美味しいと言ってくれればいい。


Ivan: 僕は料理人だから、麺も自家製、2Fに小さな製麺機で毎日作る。化学調味料は絶対に使わないし、誰かが作った素ダレを使ったりも絶対しない。一杯一杯僕の気持ちを入れて作っているよ。一口食べて「すっごいウマい!」っていうインパクトがあるラーメンには、全く興味がない。一口ずつ食べ進めて行くうちにスープの深みがちゃんと記憶に残り、優しい味に仕上げている。僕のラーメンにはトッピングやサイドメニューもとても重要。ローストトマト、チャーシューやローストガーリック、いろいろな国のチリをブレンドして作った自家製ラー油・・・。どれもラーメンを楽しい味わいにしてくれるものばかり。最近の僕の力作は、レモンガーリックオイル。ラーメンをすごくさわやかな味わいにしてくれる。


Eat 1: 2店目をオープンすると聞きましたが、どんなお店ですか?

Ivan: もちろん、すっごくいい店だよ。経堂にいい物件が見つかって、若いデザイナーに手伝ってもらってイイ感じの店になるよ。いろいろなことを考えているけれど、混ぜ麺をウリにしようと思っているんだ。ここの店でも混ぜ麺は人気。細麺に特製ダレと少量のスープを絡めたもの。見た目は、油麺と似ているけれど、油を使うとヘビーになってしまうのが嫌だから、軽く仕上げている。この店で人気のスパイシーレッドチリ麺は、アメリカに特別に注文して取り寄せているチリを使ったもの。ほど良い辛さと深い味わいがラーメンの味に奥行きを出してくれる。

新しい店では、イタリアンな味わいのミートボールとローストトマトを一緒に食べる混ぜ麺なんかも考えているんだ。すごく美味しいミートボールで、麺との相性がいい。未だメニューもこれからいろいろ考えなくてはいけないし、店のカウンターや椅子、食器も決めていかなきゃいけない。当分新店舗準備で追われそうだけど、是非期待していてね。そして又EAT1で取材してね!



Profile
Ivan Orkin(アイバン・オーキン)
アメリカ ニューヨーク生まれ。5人家族。日本好きが嵩じてコロラド大学で日本文化を専攻。NYの料理大学の名門CIA(The Culinary Institute of America)で料理を学び、NYの4つ星レストラン「ルテス」やプライベートシェフなどの仕事を経て2003年来日。2007年6月「アイバンラーメン」開店。

アイバンラーメン website:
http://www.ivanramen.com/


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